ブログ カテゴリ:音楽家コース

【レッスン体験談】プロフェッショナルのための音楽家コース5回目

プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」受講生の方からお寄せいただいた第5回目のクラス体験談をご紹介します。

アレクサンダーのレッスンでは、最初に、今日の気分や気になっていること、課題などを聞かれる。
この日、私は「歌いながら弾くこと」について話をした。

「歌うように弾く」。
そのためのひとつの練習として、メロディを声に出して歌いながら弾いてみるとよい、
とピアノの先生からアドバイスをいただくことがある。

しかし、実際に弾きながら歌ってみると、私は喉のあたりがだんだん熱くなって歌うのがしんどくなり、
途中からは心の中で歌うことになってしまう。

アレクサンダーを学び始めてから、これは余分な力で声の通り道を狭めている状態、と感じるようになった。
そしてもし、指も声を出して歌うのだとしたら、動きにくい指は、歌うのがしんどいのかもしれない。
体の中から指先へと通り抜けていく空気の通り道が、余分な力で狭められているのかもしれない。

この日のレッスンでは、股関節や膝、足を中心にワークをしてもらったり、自分で触れたりした。

そして最後に、声を出しながら弾くところを矢崎先生に見てもらった。
自分では、喉を詰まらせている感じがして少し苦しい。

まず顔に触れてもらうと、口元や頬、額までも不必要に持ち上げているのに気づく。
股関節は、座っている状態でも、いつでも動けることを思ってみる。
右の坐骨は、その外側までしっかり椅子の座面についていることを思う。
「右の肋骨は、前に押し出さなくてもいいよね」
「すると頭はもっと上と後ろに行けるよね」と先生の手に誘われて動いていくと、

背中の固さが減り、胴体に太くて柔らかい通り道ができたように感じる。
足の裏から空気が流れ込み、頭の上へすうっと通り抜けていきそう。

しかし…、
頭と鍵盤までの距離はこんなに遠いの?と驚くぐらい、いつもと違う感じがする。
腕も、こんなに胴体から離れていいの?と驚くぐくらい、伸ばしている気がする。

この同じ感覚を、うちに帰って再現しようとしてもできない。
新しい弾き方で、すぐにはうまく演奏できない。けれど、それでもいい。
毎回毎回、自分は何をしているのかな?と観察して、気づくことができれば。
「やろう、やろう」とするのではなく、「変わらないとダメ」でもなく。
変化した結果にとらわれず、あせらないで。
違うやり方を選ぶとどうなるかな?という気楽さで、続けていければいいと思う。

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(関西在住 Berryさん)

【レッスン体験談】プロフェッショナルのための音楽家コース4回目

「プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」受講生の方から、
第4回目のクラス体験談をお寄せいただきました。
ご紹介させていただきます。

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この日のレッスンでは、参加者のTさんが本番での演奏を振り返ってお話をされました。

お話を聞いていると、どれほど自分にきびしく、真剣に取り組んでおられるか、
Tさんの思いが伝わってきました。

Tさんは「うまくいかなかった」と感じたとのこと。
具体的には、「前回の演奏が良かったので過信があったかもしれない」
「ピアノの先生から言われたことがことごとく実行できなかった」
などと話されました。

矢崎先生のコメントは、「ジャッジをしない」こと。
そして、「ここにいて自分の音楽をする」こと。

「自分の音楽を作り上げる中で、先生のアドバイスの重要度は何%?」
「先生のアドバイスを100%やることは可能?」

このような先生の質問にTさんが答えていく中で、私たちは、
「他の誰でもない、いまここにいる自分の演奏に共感してほしい」
という望みを持っていることを、思い出すことができました。

矢崎先生は、「私たちは自分のからだで生きていくしかない。
自分の人生を生きていく。代わってあげられない」と言われました。

そのとき、私の頭に思い浮かんだ言葉があります。
それは以前、お寺の法話で聞いた言葉です。

「身自らこれに当たり、代わるものあることなし」

誰に代わってもらうこともできない私の人生を、この身で受けとめてゆく。
ごまかすことなく、明るく、しっかりと。
これが今の自分にとっての課題です。

(関西在住 Berryさん)

【レッスン体験談】プロフェッショナルのための音楽家コース3回目

「プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」受講生の方から、
第3回目のクラス体験談をお寄せいただきました。
ご紹介させていただきます。

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第3回のレッスンでは、「呼吸」が主なテーマだった。

この日、参加者の方が、「ある本によれば、呼吸は原因ではなく結果だ、
とアレクサンダーは考えていた」と話していた。
あとで見てみると、『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』に
書かれていた。
引用すると、アレクサンダーは、
「呼吸は身体の機能を使った作用の1つであって、
直接コントロールできるものではない」
「[身体の]システムが要求する通りに、すべての部分が完全に調和した
状態であれば、呼吸は勝手に行われる」
と考えていたそうだ。
さらに、「どうやって呼吸するかを考えるのは、そもそも必要がないし、
なんの役にも立たないどころか、有害でさえある」とまで書かれている。

有害なこと、私はやっているなあと思う。
それは、演奏中に「固まってきたな、力を抜こう」などと思ったとき。
胸を張って(肋骨を広げているつもり)大きく息を吸おうとしたり、
みぞおちを締めて(横隔膜を引き上げているつもり)息を吐ききろうとしたり。
呼吸は「原因」ではないのに、呼吸をコントロールして解決しようとしている。
これは、やらないほうがいいことなんだ。

前置きが長くなったが、レッスンでの発見について。

呼吸で空気が入っていくところである肺は、肋骨に守られている。
ガイコツ標本で見ると、この肋骨、自分のイメージよりもかなり幅が広く、
厚みがあるなあと思った。
標本に内側から触れると、背骨(胸椎)につながっている背中側の肋骨は、
かなり丸い弧を描いている。
外から見た「平ら」な背中のイメージとずいぶん違う。
そして肋骨の1本1本が、それぞれ動く。

ここで先生が、胸部の断面図を見せてくださった。
背中側を上にした、シンプルな絵。
それは、意外にもハート形だった!

先生は、ハート形の2つの凸部を指さして「ここにも空気が入ります」と言われた。
そう思ってみると、…なんだか背中側に息が入っていく。
背骨と肋骨が自然に動き、背中全体がふわっと広がる感じがする。
「たくさん息を吸おう」と思ったときは、肋骨まわりに力が入ってしまうのに。
重い引き戸を開け閉めするときも、肋骨の形と背中を思うだけで、
引き戸が軽く感じられるようになった。


もうひとつ、面白かったのは、チェロのレッスンを見学していたときのこと。
先生が、「目線を上げて、1つのところを見て」と言われ、演奏者の方が目線を
変えたそのとき、音楽の響きが床からも、背中からも伝わってきたのを感じた。
足の裏で、身体全体で音楽を聴くって、こんな感じなのかもしれない。

何がどう伝わっているのかは、一瞬一瞬で変わる。
その音楽に対する演奏者と聞き手の評価は、それぞれ別のところにある。
こんなことを体験できるから、レッスンはいつも面白い。

矢崎瑞先生です。
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(関西在住 Berryさん)

【レッスン体験談】プロフェッショナルのための音楽家コース2回目

「プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」受講生の方から、
第2回目のクラス体験談をお寄せいただきました。
ご紹介させていただきます。

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「音楽家コース/ベーシック」体験(第2回)

日差しが暖かく、新緑の黄緑色が風に揺れる気持ちのいい日。
第2回のレッスンに出かけました。

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参加者のNさんは、自分の演奏を録画で見て、
ピアノと自分が反発しているように感じたそうです。
「ピアノと一体となること」が課題でした。


ピアノでは「脱力」が大切だと言われますが、
それはただダランとなることではありません。
たとえば、腕は「ぶら下がっている」というよりも、
「下におりている」、と矢崎先生は表現されます。

肩や腕にワークをしてもらうと、首がすっと伸び、
たっぷりの空気が肺に入ってきて、視界が明るくなります。
「持ち上げていると、下に落ちていく。
下におりていると、上へのエネルギーが得られる」
という感覚を、味わっている気がします。


キッチンのテーブルには、かわいらしい花と、
いろんなコップやお皿が置かれています。
「好きなものを選んで、相手の前に置いてみましょう」。
私は手を広げてコップをつかみ、身体を傾けながら
腕を伸ばして無造作に向こうに置きました。
手は、まだ触れていないときから、コップの形を作っていました。
これは目的達成主義で、力が入ってしまうのだそうです。

次に、手を大きく広げ、手のひらを下にしてテーブルに置きます。
それから指の第1関節の力を手放すと、指が少し丸まって、
手のひらがテーブルからふわっと離れます。

その手でもう一度、コップを手に取ってみます。
今度は、コップに添うように、手が開いていきます。
触れている手はコップになじみ、余分な力は入っていない感じ。
指先のセンサーで、重さや質感の情報を受け取ることができます。
コップの中の水も、さっきとは違って見えます。

置くときは、腕を伸ばしきらずに、足を動かして相手に近づく。
「レストランの店員さんも、これを学ぶといいですね」
「こんなふうに出されると、料理の味も変わるかも」
と、感想が出ました。

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ピアノに向かうときも同じです。
「速いテンポ」が目的になると、余計な力が入ります。
構えない手で、骨盤から動かして弾く方向を向き、音楽の流れを思う。
先生は、Nさんに触れながら、腕や手の方向をサポートします。
「一音一音、指先でタッチをするたびに、エネルギーが
ヒュンと上がってくるのを感じましょう」。

Nさんの音が変わっていき、空気に伝わって、
ガラス越しの光も柔らかく動いているようです。
ピアノと一体になると、新芽が伸びるように生き生きと
音楽が流れだすのだと感じました。

(関西在住 Berryさん)

【レッスン体験談】プロフェッショナルのための音楽家コース

4月から「プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」のクラスが始まりました。
受講生の方からお寄せいただいた体験談を、ブログでご紹介させていただきます。
ぜひご覧ください。

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「音楽家コース/ベーシック」体験(第1回)

桜が残る4月の京都。
アライアンス京都校で開講されている「音楽家コース/ベーシック」に参加した。

講師は、ピアノ講師でアレクサンダー・テクニーク教師の
矢崎瑞(やざきみずほ)先生。

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5回連続講座の第1回は、参加者が「改善したい悩み」や
「今日取り組みたいこと」を話すことから始まった。
大人になってピアノを再開した私。
ジストニアで指が動かなくなった経験を言葉にすると、
頭は一瞬で「その時」に飛んで行き、胸が詰まって声も
出にくくなってしまう。

先生は話を聞きながら、足にワークをしてくださった。
「アレクサンダーで、それはどうなりましたか?」

ぎゅっと縮めていた太腿が下へとおりていき、
胸と背中の間の空間がふっと広がったと感じた。
今この場所に戻ってくる選択ができるようになった、
と自然に答えられた。

「指が動かなくなったからといって、
それは指だけがどうにかなっているのではありません」

全体がどうなっているのか?

全体には、自分全体だけでなく、環境までが含まれる。
楽器も楽譜も、周りの人も、今ここにあるものすべて。
そのものたちに沿っていきながら、習慣的に反応しない。
そんな学習をしていきましょう、と先生は話された。

いつもの自分とキャラクターの違う曲に取り組んでいる、
と話された参加者のTさん。
「人前で表現をして、人の心を少しでも動かしたい」

先生はTさんの足にもワークをする。
「足で床を感じて、今この場所にいる人とつながっていると思うと、
人に伝えたいことが伝わります」

ここから、すこし解剖学的な身体のことへ。
全身の骨格や筋肉の絵を見たり、自分で触れたりするたびに、
自分が持っている身体のイメージとの違いに、驚きがある。

立った姿勢のワークでは、
先生がTさんの肩や腕に手を触れていくと、
Tさんの中に動きがおこる。

「どんな感じですか?」
Tさんの感覚評価は、
「何だかちょっと、えらそうにしている感じ」。
私には、凛々しく堂々とした佇まいに見えた。

実際にピアノの演奏を見てもらう。
「そこ、そこから、いったい何が刺激なんだろう?」
それは指を動かしにくいと感じている所。
その瞬間、右の胸を前に押し出して身体をねじっていた。
弾きにくいという思考の「刺激」に対する、筋肉の「反応」。
自分はまったく気づいていなかった。

「ここに居たままで、弾くことができますか?」
先生の手がサポートしてくれる。
さっきより楽に弾ける。

その日の自分の身心に気づき、参加者同士で発見していく。
次のレッスンが楽しみだ。

(関西在住 Berryさん)

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