「プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」受講生の方から、
第3回目のクラス体験談をお寄せいただきました。
ご紹介させていただきます。
——-
第3回のレッスンでは、「呼吸」が主なテーマだった。
この日、参加者の方が、「ある本によれば、呼吸は原因ではなく結果だ、
とアレクサンダーは考えていた」と話していた。
あとで見てみると、『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』に
書かれていた。
引用すると、アレクサンダーは、
「呼吸は身体の機能を使った作用の1つであって、
直接コントロールできるものではない」
「[身体の]システムが要求する通りに、すべての部分が完全に調和した
状態であれば、呼吸は勝手に行われる」
と考えていたそうだ。
さらに、「どうやって呼吸するかを考えるのは、そもそも必要がないし、
なんの役にも立たないどころか、有害でさえある」とまで書かれている。
有害なこと、私はやっているなあと思う。
それは、演奏中に「固まってきたな、力を抜こう」などと思ったとき。
胸を張って(肋骨を広げているつもり)大きく息を吸おうとしたり、
みぞおちを締めて(横隔膜を引き上げているつもり)息を吐ききろうとしたり。
呼吸は「原因」ではないのに、呼吸をコントロールして解決しようとしている。
これは、やらないほうがいいことなんだ。
—
前置きが長くなったが、レッスンでの発見について。
呼吸で空気が入っていくところである肺は、肋骨に守られている。
ガイコツ標本で見ると、この肋骨、自分のイメージよりもかなり幅が広く、
厚みがあるなあと思った。
標本に内側から触れると、背骨(胸椎)につながっている背中側の肋骨は、
かなり丸い弧を描いている。
外から見た「平ら」な背中のイメージとずいぶん違う。
そして肋骨の1本1本が、それぞれ動く。
ここで先生が、胸部の断面図を見せてくださった。
背中側を上にした、シンプルな絵。
それは、意外にもハート形だった!
先生は、ハート形の2つの凸部を指さして「ここにも空気が入ります」と言われた。
そう思ってみると、…なんだか背中側に息が入っていく。
背骨と肋骨が自然に動き、背中全体がふわっと広がる感じがする。
「たくさん息を吸おう」と思ったときは、肋骨まわりに力が入ってしまうのに。
重い引き戸を開け閉めするときも、肋骨の形と背中を思うだけで、
引き戸が軽く感じられるようになった。
—
もうひとつ、面白かったのは、チェロのレッスンを見学していたときのこと。
先生が、「目線を上げて、1つのところを見て」と言われ、演奏者の方が目線を
変えたそのとき、音楽の響きが床からも、背中からも伝わってきたのを感じた。
足の裏で、身体全体で音楽を聴くって、こんな感じなのかもしれない。
何がどう伝わっているのかは、一瞬一瞬で変わる。
その音楽に対する演奏者と聞き手の評価は、それぞれ別のところにある。
こんなことを体験できるから、レッスンはいつも面白い。
(関西在住 Berryさん)