「プロフェッショナルのための音楽家コース/ベーシック」受講生の方から、
第2回目のクラス体験談をお寄せいただきました。
ご紹介させていただきます。
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「音楽家コース/ベーシック」体験(第2回)
日差しが暖かく、新緑の黄緑色が風に揺れる気持ちのいい日。
第2回のレッスンに出かけました。
参加者のNさんは、自分の演奏を録画で見て、
ピアノと自分が反発しているように感じたそうです。
「ピアノと一体となること」が課題でした。
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ピアノでは「脱力」が大切だと言われますが、
それはただダランとなることではありません。
たとえば、腕は「ぶら下がっている」というよりも、
「下におりている」、と矢崎先生は表現されます。
肩や腕にワークをしてもらうと、首がすっと伸び、
たっぷりの空気が肺に入ってきて、視界が明るくなります。
「持ち上げていると、下に落ちていく。
下におりていると、上へのエネルギーが得られる」
という感覚を、味わっている気がします。
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キッチンのテーブルには、かわいらしい花と、
いろんなコップやお皿が置かれています。
「好きなものを選んで、相手の前に置いてみましょう」。
私は手を広げてコップをつかみ、身体を傾けながら
腕を伸ばして無造作に向こうに置きました。
手は、まだ触れていないときから、コップの形を作っていました。
これは目的達成主義で、力が入ってしまうのだそうです。
次に、手を大きく広げ、手のひらを下にしてテーブルに置きます。
それから指の第1関節の力を手放すと、指が少し丸まって、
手のひらがテーブルからふわっと離れます。
その手でもう一度、コップを手に取ってみます。
今度は、コップに添うように、手が開いていきます。
触れている手はコップになじみ、余分な力は入っていない感じ。
指先のセンサーで、重さや質感の情報を受け取ることができます。
コップの中の水も、さっきとは違って見えます。
置くときは、腕を伸ばしきらずに、足を動かして相手に近づく。
「レストランの店員さんも、これを学ぶといいですね」
「こんなふうに出されると、料理の味も変わるかも」
と、感想が出ました。
ピアノに向かうときも同じです。
「速いテンポ」が目的になると、余計な力が入ります。
構えない手で、骨盤から動かして弾く方向を向き、音楽の流れを思う。
先生は、Nさんに触れながら、腕や手の方向をサポートします。
「一音一音、指先でタッチをするたびに、エネルギーが
ヒュンと上がってくるのを感じましょう」。
Nさんの音が変わっていき、空気に伝わって、
ガラス越しの光も柔らかく動いているようです。
ピアノと一体になると、新芽が伸びるように生き生きと
音楽が流れだすのだと感じました。
(関西在住 Berryさん)